相続した不動産の共有持分でできることは?発生が懸念されるトラブルも解説

相続した不動産の共有持分でできることは?発生が懸念されるトラブルも解説

相続人が複数いて、なおかつ被相続人の遺産が不動産しかない場合、不動産を全員で相続しようと考える方は多いでしょう。
しかし複数名で共有する形で不動産を相続すると、のちにトラブルに見舞われる可能性があり注意が必要です。
そこで今回は、相続した不動産の共有持分でできること、共有状態で起こりやすいトラブルの内容を解説します。

不動産の相続前に把握したい「共有持分」とは

不動産の相続前に把握したい「共有持分」とは

不動産を相続するにあたり、優先的に確認しておきたいのが共有持分の意味です。
ひとつの不動産を複数名で相続する可能性がある方は、理解しておきましょう。

共有持分とは

共有持分とは、不動産を複数名で所有する場合に、各所有者が持っている所有権の割合を指します。
相続人が1名のみの場合や、複数の相続人がいても代表者1名が不動産を相続する場合、共有持分は発生しません。
相続において共有持分が生じるのは、複数名で1つの不動産を相続する場合に限られることを覚えておきましょう。

各相続人が所有する共有持分の割合

共有持分として相続人が得られる不動産の割合は、遺産分割協議の進行状況によって異なります。
遺産分割がおこなわれる前の段階では、相続人が複数名いても、遺産は平等に分割されます。
たとえば、相続対象の土地を5名の相続人が共有する場合、遺産分割前ではそれぞれの共有持分は5分の1ずつです。
遺産分割協議がおこなわれたあとなど、相続割合に変更があった場合には、変更後の割合が適用されます。

共有持分が発生する原因

共有持分は、被相続人が生前に所有していた不動産をきょうだいで相続した場合など、相続時に発生するのが基本です。
しかし、相続以外でも共有持分が発生することがあります。
たとえば、複数名で資金を負担し合い、土地や建物を購入した場合が挙げられます。
兄弟または夫婦が協力して費用を支払い不動産を購入した場合も、費用を負担した者同士で共有持分が発生することがあるでしょう。
原則として、不動産の取得費用を2名以上で負担する場合や、不動産を所有・管理する者が複数名いる場合には、共有持分が生じやすいといえます。

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相続した不動産の共有持分でできること

相続した不動産の共有持分でできること

共有持分でできることは、使用と収益、処分の3点です。
基本的に不動産を複数名で相続したとしても、自身の共有持分だけを対象としたものであれば、使用ならびに処分することは可能です。
共有持分は所有者だけが活用できるものであり、複数名で所有する不動産であっても、共有持分のみなら共有者から同意を得る必要はありません。
ただし、不動産全体におよぶ行為は、その内容によっては共有者から一定の同意を得ない限り実施できないものもあるため、慎重な判断が求められます。

共有持分でできること1.不動産の保存行為

保存行為とは、雨漏りや外壁のひび割れの修理、草むしりなど不動産の修繕や法定相続登記手続きなどの行為を指します。
不動産を共同で所有する場合、保存行為は共同所有者の同意を得なくても、実行することが可能です。
保存行為には、不法に不動産を占拠している者への明け渡し要求や、無権利者名義の抹消登記手続きも含まれます。
また、所有する土地の活用を目的として、一定範囲において隣地などの使用を許可してもらう「地役権」の設定登記を請求することも保存行為に該当するでしょう。
所有する土地が道路に接していない場合、敷地と道路間の移動経路として土地を使用する許可を得るための請求も、地役権の一種として保存行為に含まれます。
保存行為が該当するかどうか判断に迷った場合、不動産を現状維持するために必要な行為かどうかを、考慮して判断してみてください。

共有持分でできること2.不動産の管理行為

管理行為とは、不動産の性質や形状に変化を与えない程度の変更手続きを指します。
床の傷みを修理する改修工事など、リフォームやリノベーションも管理行為の一種に該当します。
さらに、短期間であれば、相続した不動産を賃貸物件として活用し、収益を得ることも可能です。
ただし、管理行為を実行するには、不動産の共同所有者のうち、同意した者の共有持分が過半数に達していなければなりません。
実行可否の判断は共有名義人の人数ではなく、それぞれが所有する共有持分の割合が重要であることを理解しておきましょう。

共有持分でできること3.処分行為

処分行為とは、変更行為の一種で、不動産の売却や解体、大規模なリフォーム、増改築工事などが該当します。
相続した不動産を全て売却する場合、共有持分を所有している全員から同意を得る必要があります。
もし、不動産の共同所有者のなかに売却に反対する者が1名でもいる場合、その売却は実行できません。
処分行為に反対する者がいる場合、説得に時間がかかる可能性があるため、早期に行動を開始することが重要です。
なお、共有持分のみを対象にした処分は個人でおこなうことができ、他の所有者から同意を得る手間や時間はかかりません。

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相続した不動産の共有において発生が懸念されるトラブル

相続した不動産の共有において発生が懸念されるトラブル

不動産を共有する形で相続すると、将来的にさまざまなトラブルの発生が危惧されます。
共有持分で分けて不動産を相続することを検討中の方は、トラブルの内容を理解したうえで再検討することをおすすめします。

トラブル1.メガ共有の危険性

不動産を複数名で相続する際に起こりやすいトラブルの一つが「メガ共有」です。
メガ共有とは、繰り返し相続が発生し、共同所有者が数十名、あるいは数百名にまで増加する状態を指します。
不動産を相続した方が亡くなると、その共有持分は配偶者や子どもなどに相続され、次に配偶者や子どもが亡くなると、その下の世代が相続することになります。
相続が繰り返されるうちに、不動産を共同で所有する者は急激に増加する可能性があるのです。

トラブル2.共同所有者に連絡がつかない

複数名で不動産を所有する場合、他の所有者と連絡が取れなくなることがあります。
一般的に相続人は親族関係にある方々ですが、親戚付き合いが希薄だと連絡を取る機会自体が少ないでしょう。
連絡を取らないまま月日が経過すると、連絡先が不明になり、所在を探すだけでも時間と手間がかかることになります。
さらに、月日が経つことで共同所有者が亡くなり、その配偶者や子どもが知らぬ間に共有持分を相続するケースも起こり得ます。
相続人を把握すること自体が難しくなる可能性も、考えられるでしょう。

トラブル3.共有物分割請求の可能性

共有物分割請求は、不動産を共有することで生じるトラブルの一つです。
共有物分割請求とは、共有物を対象に、共有状態を解消するために裁判所に提訴する訴訟を指します。
これは、適切な共有物の分割方法を裁判所に判断してもらうための訴訟であり、一般的な裁判とは少し異なる特徴があります。
共有物分割請求において、裁判所は現物分割、価格賠償、代金分割の方法から選択しますが、不動産の場合、現物分割はできないため、価格賠償か代金分割が選ばれることが多いです。
価格賠償が命じられると、共同所有者の1名が不動産を所有する代わりに、共有持分を失った者に対して賠償金を支払うことになります。
代金分割になると、不動産が競売にかけられ、得られた代金を共同所有者間で分割する必要があることも覚えておきましょう。

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まとめ

共有持分とは、複数名で不動産を所有する場合、各人に与えられた所有権の割合を指します。
共有持分だけでできることには売却などが挙げられますが、不動産全体になると同意が必要になることもあります。
不動産を共有する場合は、メガ共有などトラブルが発生するリスクを踏まえて検討したほうが良いでしょう。