不動産売却時の税金対策!税金の計算方法や特別控除について解説

不動産売却時の税金対策!税金の計算方法や特別控除について解説

不動産を売却する際、多くの方が懸念するのが、譲渡所得税などの税金の問題です。
とくに初めて不動産を売却する方は、どんな税金がかかるのかやどのように税金を節約できるかについて不安を感じるかもしれません。
そこで今回は、不動産売却に関連する税金の種類と譲渡所得税の計算方法、譲渡所得税を抑えられる特別控除について解説します。

不動産売却時の税金対策!税金の種類とは?

不動産売却時の税金対策!税金の種類とは?

不動産売却は、大きな金額が動く取引であり、多くの方にとっては人生でそう何度も経験することではありません。
そのため、発生する税金について事前に知っておくことが重要です。
不動産売却で発生する主な税金は、手続きに必要な税金と売却益に対して課される税金の2種類になります。

売却手続きに必要な税金の種類

不動産の売買契約をおこなう際には「印紙税」が必要です。
経済的取引を文書にした際に必要とされる印紙税は、文書に収入印紙を貼る形式で納付します。
不動産売却においては、売買契約書に書かれた契約金額に応じて、以下の印紙税が定められています。

●100万円超~500万円以下:2,000円
●500万円超~1,000万円以下:1万円
●1,000万円超~5,000万円以下:2万円
●5,000万円超~1億円以下:6万円


なお、2027年3月31日までは、軽減措置によって印紙税が上記の金額から半額に軽減されます。
また、不動産を売却後は所有権移転や抵当権抹消登記にかかる登録免許税の納税が必要です。
所有権移転登記の登録免許税は買主が負担するのが一般的ですが、抵当権抹消登記については売主が負担します。
住宅ローンを利用して不動産を購入すると、金融機関はその不動産に抵当権を設定します。
この抵当権が存在する状態では、不動産の売却はおこなえません。
売却をおこなう前に、まずは残ったローンを完済し、抵当権を抹消する手続きが必要です。
この抵当権を抹消するための登記を「抵当権抹消登記」と言います。
抵当権抹消登記をおこなう際には、不動産1件につき1,000円の登録免許税がかかります。

売却益にかかる税金の種類

不動産を売却して利益が出た場合、その利益には以下の3種類の税金が課されます。

●住民税:地方税で、都道府県民税と市町村民税を合わせたもの
●所得税:所得に対して国が課す税金
●復興特別所得税:2011年の東日本大震災の復興資金として、2037年まで課される税金


これらの税金は合わせて「譲渡所得税」と呼ばれます。
譲渡所得税は、給与所得などとは別に計算される「分離課税」のため、利益があった場合には確定申告をおこない、自分で税額を計算する必要があります。

不動産売却時の税金対策!譲渡所得税の計算方法とは?

不動産売却時の税金対策!譲渡所得税の計算方法とは?

不動産売却益に課される「譲渡所得税」はいくらかかるのか気になりますよね。
譲渡所得税の計算は、以下の流れでおこないます。

①譲渡所得を計算する

まずは「譲渡所得」の計算をおこないます。
不動産売却時に得た利益がいくらであるかを確認するためのステップです。
譲渡所得の計算式は次のとおりです。
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
「取得費」とは、不動産を購入した際の費用(建築代金、仲介手数料、測量費など)を指します。
「譲渡費用」とは、不動産売却時にかかる費用(仲介手数料、印紙税など)です。
なお、建物の場合、経年劣化により価値が減少するため、減価償却をおこなう必要があります。
減価償却とは、取得費から価値の減少分を差し引くことを指します。
減価償却費の計算方法は以下です。
減価償却費=建物の購入価格×0.9×償却率×経過年数
償却率は用途や建物の構造に応じて異なり、たとえば木造住宅は0.031、鉄骨造住宅は0.025、鉄筋コンクリート造住宅は0.015です。

②譲渡所得から特別控除を差し引く

不動産を売却する際、特定の条件を満たすと利用できる特別控除の特例があります。
特別控除の特例を適用すると、譲渡所得から控除額を差し引くことができます。
たとえば、マイホームを売却したときの3,000万円の特別控除を適用した場合、譲渡所得から3,000万円を差し引くことが可能です。

③譲渡所得に税率をかける

最終段階として、課税対象となる譲渡所得に適用される税率を乗じて、譲渡所得税の額を算出します。
譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間に応じて異なります。
具体的には、不動産の所有期間が5年以下の短期譲渡所得の場合、39.63%の税率です。
一方で、所有期間が5年を超える長期譲渡所得に対しては20.315%の税率が適用されます。
所有期間とは、不動産を購入した日から売却した年の1月1日までの期間です。
たとえば、2020年4月1日に不動産を購入し、2025年4月2日に売却した場合、所有期間は2025年1月1日時点で起算するため、5年以下と判断されます。
長期譲渡所得の税率を適用したい場合は、所有期間に注意しましょう。

不動産売却時の税金対策!節税となる特別控除や特例とは?

不動産売却時の税金対策!節税となる特別控除や特例とは?

不動産を売却したときは、特別控除の特例や軽減税率の特例を適用すると節税することができます。

特別控除の特例とは?

不動産売却時の税金対策として有効なのが「3,000万円の特別控除」の特例です。
マイホームを売却する際や相続した空き家を売却する際に、譲渡所得から最大3,000万円までを控除することができる特例です。
マイホームを売却するときに特別控除を適用するには、主に以下の条件を満たす必要があります。

●住まなくなってから3年経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
●売主と買主が親子や夫婦など特別な関係にないこと
●売却した年の前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていない


相続した空き家を売却する場合は、主に以下の条件となります。

●1981年5月31日以前に建築されている
●区分所有建物登記(マンションやテラスハウスなど)がされている建物でない
●相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた方がいなかったこと


これらの条件をクリアすると、譲渡所得が3,000万円を超えない場合は、その所得に対して税金が課されないため、大きな節税効果が期待できます。

軽減税率の特例とは?

所有期間が10年を超えるマイホームを売却する際には、譲渡所得に適用される税率が通常よりも軽減される特例です。
軽減税率の特例により、売却益が6,000万円以下の部分に対しては14.21%の税率が、6,000万円を超える部分に対しては20.315%の税率が適用されます。
なお、軽減税率の特例は、前述のマイホーム売却時の3,000万円特別控除と併用可能です。
3,000万円の特別控除を先に適用し、控除後の売却益に対して上記の軽減税率を適用すると、大幅な節税効果を得ることが可能です。
譲渡所得税の特例を最大限活用するには、売却益の計算と、適用する特例を把握し、適切に確定申告をおこなう必要があります。
不動産売却に際しては、不動産会社や税理士と相談しながら、税制の利点を活用して計画的に進めましょう。

まとめ

不動産売却の税金には、手続きにかかる税金と売却益にかかる税金の2種類があります。
不動産売却益にかかる譲渡所得税を計算する際は、譲渡所得の計算と特別控除の適用可否、所有期間に応じた税率の確認が必要です。
譲渡所得税には、3,000万円の特別控除と軽減税率の特例があるため、確定申告前に適用条件を確認しましょう。